投稿日:2026.02.03 最終更新日:2026.02.03
システム開発で失敗したくない方へ:開発力より重要なのはディレクション力です
初めてシステム開発を発注する担当者にとって、「何に気をつければ失敗を避けられるのか」は見えづらいものです。
また、過去に失敗を経験した方なら、「今度こそ同じ轍を踏みたくない」という思いがあるでしょう。
システム開発は、投資額も関係者も大きくなりがちです。
だからこそ、少しの認識ズレや判断の遅れが、納期遅延や予算超過に直結します。
成功率の見立ては調査によって差がありますが、ITプロジェクトは成功率が3割前後にとどまる、という指摘もあります。
ただ、つまずきの原因は技術だけではありません。多くは、進め方の乱れにあります。
要件定義の曖昧さ、問題の先送り、意思決定の遅さが重なると、後から立て直しづらくなります。
この記事では、失敗の典型パターンと原因を整理したうえで、失敗確率を下げる鍵として「ディレクション(統括管理)」を重要性を言語化します。
読み終えたときに、発注前に確認すべき点と、プロジェクト中に止めるべき兆候が整理できるようにします。
まずは、プロジェクトが崩れ始めたときに出やすい「兆候」から確認します。
失敗は突然起きるのではなく、早い段階の小さな歪みを放置した結果として大きくなりがちです。
- 失敗が起きやすい3つの兆候と初期対応
- 失敗要因5つの潰し方と発注側の役割
- ディレクション不足を見抜く判断ポイント
目次
これが見えてきたらシステム開発が失敗する予兆

「失敗」といっても、いきなり炎上するとは限りません。
多くの場合は、よくある兆候が積み重なって、納期遅延や予算超過、品質不足につながります。
ここで挙げる3つは、原因そのものというより「今の進め方だと危ない」というサインです。
どれかが見えた時点で、ディレクション(判断と調整)を強めると、手戻りを小さく止めやすくなります。 まずは、現場でよく見かける3つのパターンを確認しましょう。
予兆01. 要件が固まらないまま進み、手戻りが増える
要件が曖昧なまま開発に入ると、途中で機能追加や仕様修正が連鎖します。
追加要求が出るたびに手戻りが発生し、工数が増えます。
その結果、納期と予算が崩ります。
テスト時間も圧縮され、品質問題が増える流れに入りやすくなります。
発注前の段階でできる予防策は、次のとおりです。
- 目的・対象業務・利用者・優先度を「文章」で揃える(口頭だけにしない)
- 画面イメージ/業務フロー/利用シナリオを用意して、完成像のズレを先に潰す
- 「今回やらないこと」を決めてスコープの線を引く(次フェーズへ回すものを明確にする)
予兆02. 決める人がいなくて、優先順位がブレる
誰が最終判断するのか。
ここが曖昧な状態は危険です。
各担当が個別最適で判断し、意思決定が遅れ、調整が属人化します。
結果として、仕様がブレ、開発が止まり、最後に無理をして品質が落ちる展開になりがちです。
発注前の段階でできる予防策は、次のとおりです。
- 意思決定者(最終決裁)と窓口(一次回答)を分けて明確にする
- 仕様変更の判断基準(費用・納期・品質のどれを優先するか)を先に決める
- 関係者が多い場合は、承認フローと締切(いつまでに誰がOKするか)を決めておく
予兆03. 報告はあるのに、実態が見えない
進捗会議が「報告会」になり、実態の確認が弱いと、小さな問題が放置されます。
「来週までに何とかします」の積み重ねは、納期直前の大きな破綻につながりやすいです。
遅れや不具合の芽は、早く見つけるほど修正が軽く済みます。
発注前の段階でできる予防策は、次のとおりです。
- 進捗報告は「%」ではなく、成果物(画面・デモ・設計・テスト結果)で確認する運用にする
- 課題・リスク・決定事項を一元管理し、更新頻度と担当を決める
- 定例の目的を「報告」ではなく「意思決定」に置き、毎回“決める項目”を持ち込む
システム開発が失敗する5つの要因と対策

では、この失敗の予兆は、なぜ起きるのでしょうか。
ここからは根本的な要因を5つに整理し、それぞれの対策を確認します。
- 完成像の合意が取れず、要件が固まらない
- ディレクションが弱く、判断が遅れる
- 納期と予算の前提が非現実(余裕がない)
- 変更ルールがなく、スコープが膨らむ
- 記録と見える化が弱く、認識ズレが増える
それぞれの要因とその対策について、詳しく見ていきましょう。
要因01. 完成像の合意が取れず、要件が固まらない
要件が曖昧なまま開発に入ると、途中で機能追加や仕様修正が連鎖し、手戻りが増えます。 結果として、納期と予算が崩れ、品質問題も起きやすくなります。
要件定義が崩れる背景は、発注側と開発側の両方にあります。
発注側は、業務の課題や要望を具体化しきれないことがあります。
開発側は、ヒアリングが浅いまま経験則で進め、真のニーズを取り切れないことがあります。
社内の関係者間で認識が揃わないまま要望が上がってくると、要件は揺れやすくなります。
押さえどころは、要件を「文書で合意できる状態」にすることです。
RFP(提案依頼書)や要件定義書で、目的、対象業務、利用者、必須機能、制約条件、運用条件を整理します。
画面イメージや業務フロー、利用シナリオを使って、完成像の認識差を潰していくのが現実的です。
要因02. ディレクションが弱く、判断が遅れる
意思決定者が曖昧だと、各担当が個別最適で判断し、仕様がブレます。 調整が属人化し、開発が止まり、最後に無理をして品質が落ちる展開になりがちです。
ディレクションが不足する背景には、「管理はコスト」という誤解があります。
開発の成果物は目に見えますが、ディレクションの価値は「問題が起きないこと」として表れます。
うまく進んでいる間は見えにくく、削られやすい領域です。
しかし、ディレクション不在は、意思決定の遅れ、優先順位の迷走、問題の先送りを生みやすくします。
ここで必要なのは、プロジェクト全体を俯瞰し、判断と調整を担う役割を明確に置くことです。
規模に応じて、PM(プロジェクトマネージャー)やディレクターの専任配置、PMO支援の活用も検討します。
発注側にも、窓口と意思決定の責任者がいるだけで、認識ズレと手戻りの確率が下がります。
要因03. 納期と予算の前提が非現実(余裕がない)
余裕がない計画は、少しのトラブルで破綻します。 予備期間も予備費もない状態では、想定外の事態に対応できず、品質を犠牲にして無理やり進めることになります。
「早く、安く」という圧力は、計画段階から失敗を呼び込みます。
余裕がない計画は、少しのトラブルで破綻します。
ポイントは、予備期間と予備費を含めて、現実的な計画を作ることです。
要件が固まりきっていない段階では、段階的リリースやスモールスタートを前提に、スコープを絞る判断も必要です。
不確実性が高い場合は、PoC(概念実証)で見積もりの精度を上げるのも役に立ちます。
要因04. 変更ルールがなく、スコープが膨らむ
追加要求が出るたびに、影響評価をせずになし崩しで取り込むと、当初の範囲を超えて要求が膨らみ続けます。 結果として、工数が増え、納期が遅れ、予算が超過します。
スコープクリープは、当初の範囲を超えて要求が膨らみ続ける状態です。
追加要求そのものが悪いのではありません。
問題は、変更の影響評価と合意が曖昧なまま、なし崩しで取り込むことです。
変更要求を管理する仕組みを最初から入れるのが基本です。
当初スコープを文書で合意し、変更が出たら必要性、優先度、工数、納期影響を評価します。
入れるなら何かを削る、次フェーズに回すといったトレードオフの交渉が必要になります。
要因05. 記録と見える化が弱く、認識ズレが増える
議事録や決定事項の記録が曖昧だと、「言った・言わない」が発生し、認識ズレが蓄積します。 問題が潜伏したまま進み、後から大きなトラブルとして表面化します。
コミュニケーション不全は、プロジェクトのあらゆる場面で影響します。
前提の違い、専門用語の理解差、現場と意思決定層の断絶、部門間のサイロ化があると、問題が潜伏しやすくなります。
ただし、コミュニケーションの量を増やすだけでは足りません。
議事録と決定事項の文書化、タスクの見える化、質問しやすい場づくりが必要です。
発注側と開発側の間に「翻訳」と「調整」を担う役割がいると、認識ズレを早い段階で止めやすくなります。
発注前の必須対策:見積もり前に前提を揃える(最小チェックリスト9項目)
5つの要因と対策を見てきましたが、これらすべてに共通する対策があります。
それが「見積もり段階での準備」です。
見積もりを依頼する前に、最低限これだけは揃えてください。 前提が曖昧なまま見積もりを取ると、各社の提案内容がバラバラになり、比較できません。
| 項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 目的/背景 | なぜ作るのか、何を解決したいのか |
| 対象範囲 | 対象業務・対象部署・対象ユーザー(社内/社外) |
| 優先度 | 必須(Must)と希望(Should)を分ける |
| 制約 | 既存システム、運用ルール、セキュリティ要件、利用端末など |
| 連携・データ | 外部連携の有無、データ移行の有無、帳票/CSVなど入出力 |
| 運用 | 運用担当、運用時間、問い合わせ対応、保守の前提 |
| 受入条件 | テスト範囲、受入シナリオ、検収基準(不具合の扱い含む) |
| 変更ルール | 追加要望が出たときの見積もりと合意プロセス |
| 体制 | 社内の窓口/決裁/現場協力者、開発側のPM/開発担当 |
これらの項目を揃えることで、見積もりを「同じ条件」で比較できるようになります。
各社の提案が同じ前提で出されるため、価格差の理由(範囲の違い、品質の違い、体制の違い)が明確になり、後出しの追加費用や認識ズレも防げます。
結果として、社内への説明もしやすくなり、契約後の「想定外」も起きにくくなります。
見積もりを比較可能にする3ステップ
各社の提案を”価格”だけでなく、前提・範囲・リスク込みで横並び比較できるようにします。
- このチェックリストを一度埋めて、各社に同じ内容で提示する(前提を揃える)
- 返ってきた見積もりの「前提・含む/含まない」を表にして差分を見る(比較する)
- 不明点は追加質問し、条件を揃えたうえで最終判断する(決め切る)
この3つをやり切ると、見積もりの「どこが違うのか(範囲・体制・品質・運用・リスク)」が可視化されます。
結果として、社内説明の根拠が作りやすくなり、契約後の”想定外の追加費用”や手戻りも起きにくくなります。
失敗確率を下げる鍵はディレクションにある

ここまで5つの要因と対策を見てきました。
気づいた方も多いと思いますが、各対策には共通点があります。
「誰かが全体を見て、決めて、止めて、揃える」ことが必要です。
それがディレクションです。
失敗要因はディレクション不足に集約されやすい
要件定義が曖昧なまま進むのは、完成像の合意を作り切れていないからです。
無理な計画を受け入れるのは、リスクを評価して交渉する役割が弱いからです。
変更が膨らむのは、優先順位を判断し、線を引く役割が曖昧だからです。
コミュニケーションが乱れるのは、言葉の定義や決定事項を揃える仕組みが弱いからです。
一見すると個別の原因に見えても、根は「ディレクションの不在や弱さ」に集約されやすいのが現実です。
ディレクションが軽視されやすい4つの背景
ディレクションが軽視される背景には、典型的な理由があります。
- 価値が成果物として見えにくい
- コスト削減の対象にされやすい
- 技術力偏重の誤解がある
- 発注側が「開発=実装」と捉えがち
もちろん「目に見えて何かを開発する」わけではないので、費用を押さえたくなるのは理解できます。 しかし、ディレクションを削るほど、手戻り、遅延、品質問題が増えるリスクが上がります。
このディレクションが後々の成果物に反映されてくるのです。
ディレクションが強いと品質とスピードが両立する
ディレクション力が高いと、プロジェクトは安定します。
目的と成功基準が明確になり、判断がブレにくくなります。
小さな問題の段階で論点が整理され、意思決定が早くなります。
結果として、テストやレビューの時間が確保されやすくなり、品質が上がります。
ディレクション力の高い開発パートナーの見極め方
失敗したくないなら、開発会社の「技術スタック」よりも、ディレクションの品質を見てください。
よくある判断軸に「大手だから安心」があります。 ただ、実際の成否を分けるのは会社規模そのものではなく、誰が窓口で、誰が判断し、誰が手を動かすかです。 大手でも、窓口と開発が分断されたり、体制が多層化すると、意図の伝達ロスや意思決定の遅れが起きやすくなります。 だからこそ、「どんな体制で、どう進めるか」を具体的に確認してください。
見極めの観点は、次のとおりです。
- 実績が「納品して終わり」ではなく、保守や追加開発まで続いているか
- 初回ヒアリングで、業務課題の深掘りと整理ができているか
- 体制と担当が明確で、誰が何を担うかを説明できるか
- レスポンスの速さと、回答の具体性があるか
これらの観点で確認することで、「作る力」だけでなく「決める力」「揃える力」を持つパートナーを見極めやすくなります。
レブクリエイトが重視するディレクションと伴走体制

ここまでの話を踏まえると、失敗を避けるために見るべきは「ディレクション力」です。
株式会社レブクリエイトは、要件整理から運用までを見据えたディレクションを重視し、システム開発を支援しています。
ディレクションで得られる3つの成果
ディレクションの成果は、単なる「進捗管理」だけではありません。
要件の合意形成、意思決定の早さ、現場への定着まで含めて、成果につながります。
レブクリエイトが目指す成果は、主に3つです。
- 手戻りを減らす(目的・優先度・受入条件が揃う)
業務の目的に沿って要件を整理し、Must/Shouldや「今回はやらないこと」まで含めて合意します。これにより、開発中の追加要求が“後出し”になりにくく、見積もりブレや手戻りを抑えやすくなります。 - 判断が早くなる(論点が整理され、決め切れる)
迷いが出やすい局面で論点を分解し、選択肢とトレードオフ(費用・納期・品質)を見える化します。結果として、会議が報告会で終わらず「何を決めるか」が明確になり、意思決定が前に進みます。 - 現場に定着する(運用まで落ちる)
導入して終わりではなく、現場の使い方や運用フローまで踏まえて設計します。権限・入力ルール・例外対応・教育/引き継ぎまで含めて落とし込むことで、使われない/回らない状態を防ぎやすくなります。
だからこそ、発注前に「技術スタック」や「会社規模」だけで判断するのではなく、要件の合意・意思決定・変更管理を前に進めるディレクションが機能する体制かどうかを確認することが重要です。 言い換えると、「誰が決めるか」「何を成果物として確認するか」「変更が出たときにどう合意するか」が説明できるパートナーほど、失敗しづらい進め方を作れます。
要件整理から保守まで一貫して支援する理由
要件定義、設計、開発、導入、保守は、本来つながっています。
担当がフェーズごとに分断されると、背景や意図が失われやすくなります。
レブクリエイトは、企画・要件定義から保守までの一貫支援を前提に、方針と判断を積み上げていきます。
300社以上の支援実績から見えたディレクションの重要性
弊社レブクリエイトでは、300社以上のお客様のシステム開発・改善をご支援してきました。 その中でも共通して大切だと感じるのは、技術そのもの以上に「要件の合意」「意思決定」「変更管理」を前に進めるディレクションです。
株式会社ガッツ・ジャパン様でシステム開発をご一緒させていただいたケースでは、「できません」と突き放さず、一緒に解決策を考える姿勢といった当社のディレクションについて、ご評価をいただいています。
また、中部国際空港株式会社様で開発をご一緒させていただいたケースでは、関係者が多い状況でも調整と合意形成を前に進め、業務効率化につなげた点など、当社のディレクションについてお声をいただいています。
発注前は「どんな機能を作れるか」だけでなく、誰が全体を見て、決めて、止めて、揃えるのかまでセットで確認することが、失敗確率を下げる近道です。
システム開発を成功に近づけるために押さえること
システム開発は「作ること」よりも、「決めること」でつまずきます。
失敗したくないなら、発注前に「どこまでやるか」と「どう決めるか」を先に固めましょう。 要件・優先度・受入条件・変更ルールを言語化しておくだけでも、見積もりのブレと後半の混乱が減らせます。 そして、判断と合意形成を前に進めるディレクションが機能すると、手戻りと追加費用を抑えやすくなります。
弊社レブクリエイトは、2011年設立の開発会社です。
現場理解を起点に、業務と技術の「翻訳」を行い、要件整理から保守まで一貫して支援します。
納期・品質・費用のブレを減らし、現場に定着する形へ落とし込みます。
システム開発業者の選び方|業者選びの判断軸と「ディレクション力」で見極める方法
Excelが限界、業務が属人化、既存システムが老朽化——「そろそろシステム化しよう」と動き出したとき、最初にぶつかるのが「どの会社に頼めばいいか分からない」という壁です。 検索すれば会社は山ほど出てくるのに、どこも「実績○○件」とアピールしていて違いが分からない。 知名度や実績数だけで選ぶと、担
- 失敗は「要件の合意不足」と「決め方の曖昧さ」から始まりやすい
- 発注前に、優先度・受入条件・変更ルールまでセットで決めておく
- 体制(誰が決めるか)が曖昧だと、意思決定が止まりやすい
- 成否は、ディレクション品質(判断・調整・合意形成)に左右される
- 不安があれば、要件整理の段階から相談する